先週は『分離発注』、『施主支給』とは何かについてふれましたが、続けてそのメリット・デメリットについてお話したいと思います。
今回は、『分離発注』のメリット・デメリットについてです。
分離発注のメリット
最も大きなメリットは『コストの削減』です。
例えば通常ハウスメーカー・工務店などの建築会社で建築の依頼をした場合、建築会社がそれぞれの下請け業者に工事を依頼することになります。建築会社はマージンを取って利益を出しているのですが、その額が結構大きいのです。
建築会社の担当者に、「マージンはどれくらい取っていますか?」と質問してもなかなか教えてくれるものではないと思いますが、一般的にハウスメーカー・工務店のマージンは価格の15~35%と言われています(工事内容や建築会社ごとに異なります)。下請け業者の見積りが100万円の工事であれば、私達の手元に届くときには140万円(マージン約28%の場合)になって提出されてしまうのです。
せっかく一生懸命貯めたお金なのですから、出来る限り自分達にとって有益な使い方をしたいという理由が、分離発注を選ぶ方の一番多い理由です。
また付随的なメリットになるのですが、『分離発注をした人の方が家に対する愛着が強くなる』と思います。色々な建築ブログを読んだり、実際に分離発注をされた方のお話を聞くと、一つ一つの部材をご自身で精査した分だけ、家に対する思い入れが強くなっているようです。
分離発注のデメリット
そうは言っても、メリットばかりではありません。分離発注の一番のデメリット、それは『施主の労力が圧倒的に増える』ということです。
建築会社を通さなくなることで、施主は各々の業者を打ち合せを行わなくてはなりません。打ち合わせの際にはそれぞれの会社の事務所に出向くことも必要になってきますし、割かれる時間も非常に多くなってしまいます。
更に、業者間の工事の調整も必要となります。工事のスケジュール、素材の相性、部材同士の収まり、など、一方の業者で聞いたことをもう一方の業者に伝えるというような橋渡しも、しなくてはなりません。
また、もう1つの大きなデメリットとして補償の問題があります。完成後のことを想像してみましょう。
例えば、屋根と外壁の継ぎ目部分から雨漏りが起きたとします。同じ業者が工事していれば良いのですが、屋根と外壁の発注先が違った場合、どちらの責任でどちらが補償するかという問題でトラブルになる可能性があります。
設計事務所がサポートに入る分離発注(工事費用の5%程度が現場管理料の相場のようです。)では施主の負担が有る程度は軽減されますが、それでも建築会社に任せるよりも負担ははるかに大きいのが現状です。
分離発注の家作りを成功させるためには、「大変でもやり遂げるぞ」という決意と覚悟が必要です。実際に分離発注の体験談を参考にしたり、メリット・デメリットをしっかりと理解した上で選択することが大切です。
次回は『施主支給のメリット・デメリット』をお話します。どうぞお楽しみに!