住宅ローンは立派な借金です。借金はなるべく早く減らしたい、と思うのが世の常です。相談にお見えになる方のほとんどが、なるべく早く住宅ローンは払ってしまいたい、とおっしゃいます。
さて、繰り上げ返済はホントに「お得」なのでしょうか?
ライフプランや生活状況によっては、必ずしも「お得」といいきれない状況も想定されます。
住宅購入資金として3000万円を35年返済にてフラット35「S」で借入した場合、平成23年8月の最安金利は1.35%。当初10年間の月々の返済額は8万9666円。35年間の金利総額は1095万円。
12月のボーナスでこれを100万円繰り上げ返済した場合、どれくらいの効果があるでしょうか?当初10年目までは月々が3,011円安くなり、利息の軽減総額は36万3497円!100万円を定期預金に預けてもわずかな金利しかつかないこの時代に、たしかにこれは大きな効果といえます。
さて、来年の春になりお子さんが大学に進学。入学金で100万円が必要となりましたが、繰上げ返済してそのお金がない!仕方がないので金融機関から学費ローンを調達したとします。
100万円を2.85%で5年返済で借り入れるとします。
月々の返済額は1万8200円。金利の総額は7万3800円。せっかく繰り上げ返済で3000円近く月々の返済がラクになったのに、逆に1万5000円程度増えてしまってます。しかもこれに授業料が上乗せされる。金利総額では相殺しても29万円近く「お得」になっていますが、月々の支払い総額は「きつく」なってしまっています。
かといって、返してしまった100万円を再度「住宅ローン」で組みなおすことはできません。住宅ローンは借りる側にとってはとても有利な「超低金利ローン商品」であることを忘れてはいけません。
わかりやすく一例述べましたが、繰上げ返済をすることで「借金」が減るとともに「現金」も減ってしまう点に注意が必要です。
しっかりと自分のライフプランを確認した上で、いまは「借金を返済する」のが優先なのか、「現金を保有する」のが優先なのか、慎重に検討することが重要です