ハウスメーカー神話は本当か?
「大手メーカーなら、どこでも安心ですよね?」
「みんな建ててるから大丈夫なんですよね?」
これは、私がハウスメーカーで営業をしていた頃にお客様からいただいた言葉です。
ハウスメーカーが「当社は大手なので大丈夫です。」と宣伝文句に使うのなら分かるのですが、お客様の中にも少なからずこのような認識をお持ちの方がいることには驚きました。
「大手ハウスメーカーなら建物の質が高く、欠陥もおきない」
これは、一種のハウスメーカー神話ですが、実際のところどうなのでしょうか?
部材精度と施工精度は別物
欠陥云々に関わってくる質を決めるのは『建物が正確に作られているかどうか』によって決まります。
建物の精度を決める要素は『部材精度』と『施工精度』です。
この2つの点でハウスメーカーを見てみましょう。
ハウスメーカーの部材精度
まず『部材精度』に関してですが、ハウスメーカーは独自の工場を持っており、工場から出荷する時点で部材ごとの精度をチェックしているところが大半です。
現場では大工さんの腕と良心に委ねられていた木材のカットが、工場での機械によるカットと検査員によるチェックへと置き換わることで、部材精度自体は向上すると思います。
最近は工務店でも部材のプレカット化は進んでいますので、どこまで差があるかというのはメーカー・工務店ごとに比較しなくてはいけませんが、全体的に見るとこの点はハウスメーカーに部がありそうですね。
具体的な業者比較に入られている方は、
「どの程度の部材をプレカットするのですか?」
「プレカット部材に許されている誤差はどれくらいでしょうか?」
と質問していただくと良いと思います。
ハウスメーカーの施工精度
一方、施工精度はどうでしょうか?
ご存知の方も多いと思いますが、ハウスメーカーの現場工事を行うのは下請け業者です。
ですから、施工精度を決めるのは下請け業者の腕によるところが非常に大きいです。
もちろん、ハウスメーカーの施工主任が現場の管理も行いますし、完成後は建物全体の検査も行いますから、ハウスメーカーが設定する基準をクリアしているでしょうが、『ハウスメーカーの基準をクリアしていること』と『ハウスメーカーの基準が高く、満足・安心できるレベルであること』というのは全くの別物です。
ひょっとしたら、ハウスメーカーよりも地元工務店の方が高い基準で仕事をしているかもしれないのです。
また、ハウスメーカーの施工主任も24時間現場に張り付いているわけではないですから、ひょっとしたら見落としが起こることもありえます。
ですから、私は『大手ハウスメーカーだから大丈夫』ということは言えないと思います。
出来れば現場を数軒見て比較をする
オススメしたいのは、検討しているそれぞれの会社の建築現場を数件ずつ見比べてみることです。
1軒ずつだけであれば気付かないかもしれませんが、何軒か見ているうちに『その建築会社の工事の水準』、『現場ごとの精度のばらつき』というものが見えてきます。
見て回るのは手間ですが、建てた後で後悔しても手遅れですから、ここは是非時間を割いていただきたい部分です。
ホームインスペクション制度の導入も視野に
メーカー選びの後の話になってしまうのですが、最近では、工事中に現場をプロの住宅診断士がチェックする『ホームインスペクション』という制度も存在します。
住宅診断のプロが中立的な立場でチェックすることにより、工事を安心して見守ることができます。
これからの分野なので、まだ広く普及しているとはいいづらいですが、現場の引き締めにもつながりますので導入されるのも良いかもしれません。