「頭金 0円」
「今の家賃と変わらない支払いでマイホームを」
不動産広告によく謳われる文句です。
賃貸の家賃を支払いながら、マイホーム資金を貯めるというのはたしかに大変な努力が必要です。そこに「頭金は貯めなくてもマイホームは購入できますよ」といわれれば、ホロリとくるのもうなずけます。
以前の住宅ローンは「年収の5倍まで」とか「購入資金の80%まで」など、かなり制約が厳しくて購入資金の全額をローンで借り入れるは難しいことでした。
これは、借り入れたい人を「イジメ」ているわけではなく、むしろ借り入れたい人を「マモル」ルールでもありました。
というのも、住宅ローンで破綻される方にはさまざまな理由があります。ただ共通していえるのは生活ギリギリのローンを組んでしまい、わずかな生活や収入の変化に対応ができなかった、ということです。
なかでも、給料が減るなどして住宅ローンの返済がキツくなったとき、その家を売却して
負担の少ない賃貸などに変えようとしたとき、売却額よりローンの残高が上回ってしまい売却のしようがなくなる。こんなことが多く見受けられます。
頭金を一定額投入していれば、このような事象をふせげることが多いのです。
実例でみてみましょう。
3000万円の建売を、この8月にフラット35最安金利(2.35%)で購入するとします。
月々の支払いはそれまでの家賃11万円に近い金額で。
「頭金0円」だと月々10万4800円の35年支払いとなります。
「頭金600万円」だと10万5800円の25年払いとなります。
さて。
10年後、会社の景気が悪くなり給料が減ったのでこの家を売却する試算をすることになりました。不動産会社の見積りでは売却額は2000万円。
「頭金0円」だとローンの残高は2382万円。
「頭金600万円」だとローンの残高は1612万円
その差は約770万円。600万円の頭金が170万もの差になってあらわれてきます。
「頭金600万円」のパターンであれば、売却しても手元に400万円弱の資金が残るので次の生活設計の元手になりますが、「頭金0円」の場合は売却すらむずかしい状況。金融機関に許しを得て売却が出来たとしても、380万円もの負債をかかえたまま再スタートをきることになります。
できれば20%以上の頭金を購入額に投入することで、先々生活状況の変化等にフレキシブルに対応できるようになるわけです。
では、もうすでに「頭金0円」で買ってしまったよ、という方はどうしたらよいでしょうか?
ずばり、「貯蓄」をしてください。
現在のローン残高と市場売却額を比較してローン残高が上回っていたとしたら、まずはその分を埋めるべく「貯蓄」をすることです。
じつは売却額+貯蓄の合計に対してローン残高が上回っている状態を「債務超過」といいます。これは財産状況としては「破綻」している状態なのです。ただ返済できているうちは「明るみに出ない」だけのことです。非常に危険な状態です。
生活設計を見直しムダを省いて、その分貯蓄に励んで、債務超過から抜け出すことが、大切な家族とマイホームを守ることにつながります。